この「文具戦闘力サイト」は、文房具メーカーにて実際に現役で働いている文具ブラザーズならではの視点で、文房具業界の実態や裏側まで語っていたりします。
文房具メーカーに勤めるためにはどのような大学・学部で学ぶことがいいのか、勤めたら年収はどれくらいなのか、それぞれの文房具メーカーの特長は?など様々な視点から語っています。
今回は、実際に文房具メーカーでマーケターやクリエイターとして今もなお現役で働いている文具ブラザーズの経験から、文房具メーカーに勤めるとどんな流れで、どんな仕事を任せてもらえていくのか、また働いて良かったことやつらかったことなどを生々しく書くことで、文房具メーカーで働くことをより詳細にイメージしてもらいたいと思います。
就活の不幸って、入った会社がイメージしていたものと違うってことですよね!?少なくとも文房具業界において、そんな不幸を少しでも減らせたらと思っています。実際には、文房具メーカーそれぞれにおいても特色は違うと思います。しかし、業界は同じですので他業界との比較はできると思います。文具ブラザーズが経験してきた実態、または後輩たちを見て見聞きしてきた実態ということでご理解ください。この『開発者ものがたり』は①と②のふたつに分けてお送りします。まずは、前編です。
文房具メーカー開発者<入社~1年目ものがたり>
入社して直後は、集合研修です。ここ数年は、ゴールデンウィーク明けまでの約1か月間、職種に関わらず全新入社員で研修を行います。ビジネスマナーなどの研修はもちろん、会社のことを知ったり事業や商品について学びます。集合研修では、各部署からきた先輩社員による講義や座談会などもあったりします。大きな全体感からつかんでいき、徐々に細分化されて事業部や部署の役割やミッションなどの理解を深めていきます。
そして、時にグループワークをしながら課題のアウトプットを出していきます。正直この約1か月間は、学校の延長線上という感じで学びを得ることが仕事です。そして、新入社員同士の絆を深めて、とにかく飲みに行く日々です。(2020年入社の人たちは、新型コロナウイルスの影響で全研修が全てオンラインで行われましたので例外です。同期同士でも実際に飲みに行くことはできず、大変だったと思います)
そして、研修期間中に配属希望部署を聞かれ、第一希望:〇〇部、第二希望:△△部、第三希望:□□部ということを提出したりします(会社によっては入社と同時に配属される部署や職種が決まっているところもあると思います)。こうした希望なども確認しながら、会社としてはできる限りミスマッチを少なくするように配慮されています。正直、このあたりについては十数年前などと比べるとかなり優遇され、新入社員に対して手厚い対応になっていると感じます。昔は希望の部署にならないことも多かったように感じます。
そして、部署に配属されてそれぞれの環境での仕事がスタートします。配属されるとOJTと言って、チューター制度がとられているところも多いと思います。中堅の社員に張り付いて教育を受けます。はじめは分からないことだらけだと思うので、このチューターにべったりついて実地研修をしていきます。チューターは早く一人前に育てるのが仕事です。よく言われるのですが、その後の仕事っぷりなどがチューターにはよく似てくるって言うんですよねー。だから、どんなチューターに当たるかはとても大切だったりします。これは運ですね。
ここから1年目が終了するまでは、チューターである先輩社員に仕事を教えてもらいながら、先輩の仕事の一部を任せてもうらような日々で学んでいきます。開発と聞くと華やかなイメージがありますが、開発にまつわる文書の作成や書類の発行などかなり雑多な業務があります。このような仕事を少しずつさせてもらいながら実務を覚えていくことがメインの仕事となります。
文房具メーカー開発者<2~3年目ものがたり>
2年目になると、なんともう後輩たちが入ってきます。その割に1年目は仕事を覚えるのが精一杯で、まだまだチューターにお世話になりっぱなし。少し焦りが出てくるのがこのタイミングです。会社によって違いますが、チューター制度は2~3年目までは続きます。
このころから、先輩のお手伝いのみではなく、少しずつ自分だけに任された仕事ももらえるようになります。メーカーの商品開発部門では、新商品を開発することと共に既存品のメンテナンス業務という仕事もウエイトを占めます。4M変更(Man:人、 Machine:機械、 Method:方法、 Material:材料)と言ってすでに販売している商品の何かが変わることに対して、変わっても問題ないことを確認して変更を進める仕事です。目的はそれぞれですが、生産性をあげてコストダウンをしたり、使っていた材料の供給がストップしてしまったため類似の代替材料に変えるなどがあります。若手のときはこのような業務をしながら開発プロセスを学ぶ良い機会になります。
また2~3年目になると、ほとんどの人が担当の企画開発テーマを持つことになります。担当を持ったら一人前の開発マンです。
文房具の開発者は会社によって多少は違いますが、自動車メーカーや家電メーカーと違ってモノも小さく扱いやすいためある程度最初から最後まで関わることができます。つまり、自分自身で研究開発をして、設計やデザイン、生産の立ち上げまで行うといった具合です。これが文房具の開発の醍醐味かもしれません。
自動車メーカーだと、研究開発のみをする人、設計のみをする人、デザインのみをする人、生産技術のみをする人と細分化されて1つのモノを作り上げたりします。文房具は一連のプロセスを開発担当者がイニシアティブをもって進めていきます。もちろん、これは担当のテーマの内容や会社の戦略や組織体制によって差は出ますが、全てを任されるところもあれば、外部パートナーを活用したり、研究開発やデザイン部門は別にあって協業しながら進めていく場合もあります。しかし、後者であっても開発担当は外部や他部門を巻き込んでディレクター的な動きをとって開発を進めていくような役割になります。
ここで、そもそも設計や生産技術のことは学生のときには学んでこなかった専門外です・・・という人も多いと思います。これだけ多くの役割を担うと言っても不安も多いと思います。それはもちろん会社としても織り込み済みです。2~3年目においても実務でのスキルアップをするために、社内での研修会や外部でのスキルアップする講座への参加など、後押しはしてくれますので心配は必要ありません。
少し話はそれましたが、2~3年目までは自分自身が開発マンとして一人前になるために、担当テーマを元に一連のプロセスを実際に経験しながら学んで商品を上市していく経験をしていきます。
まとめ
『開発者ものがたり』前編はいかがでしたか?
実際にメーカーに入社してから、どのようなステップでどのような経験をして、一人前の開発マンへと成長していくのか、少しはイメージしていただけたのではないでしょうか。本当に多岐に渡る経験ができるので、その分スキルも身について本当に楽しい仕事だとつくづく思います。
↓後編『開発者ものがたり②』はコチラから